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地域の育児力

野原を走るこどもたち(提供,photoAC)
野原を走るこどもたち(提供,photoAC)
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初めて地域(通学校区)のとんど祭りに参加させていただいた日から,あっという間に1年が経ちました。
幼いころから祭りごとが大好きな私。その背景にあったものとは?
そして,令和2年の「とんど祭り」では,どのような「ワクワク」が待っていたのでしょうか?

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 1 ここから始まった,人との「ふれあい」

地域(通学校区)の方々との〈つながり〉が始まったのは,1年前の「とんど祭り」でした。子ども会の役割を終えた後,息子と娘と一緒に残り,「地域の輪」に入らせていただいたことが契機となったのです。私は,お祭りや人が集い,楽しくワイワイすることが大好きな性分。併せて,父が幼い私の手を引いていろんなところに連れて行ってくれたこと,そして,その中でたくさんの「人」に出逢わせてくれたことにも私の原点があるのだろうと思います。

根っからの「お父さん子」だった私は,父がどこかへ出かけるとなると一緒に行きたくて駄々をこねるこどもでした。母も「お父さんは仕事に行くんよ」と言っていたけれど,「遊びに行っている」と完璧に理解していたからだだをこねていたのです。両親がいくら隠そうとしても無駄な抵抗でした(笑)。

私が生まれ育ったところは,広島県の最南端にある倉橋島です。父が出かけるといえば,釣りか家飲み(誰かの家に招かれることもあれば,自宅に招くこともしばしばでした)。父も初めのうちは「一緒には(連れて)行けない。」などと言っていたのですが,毎回せがまれることに根負けしたのか,ある日「そんなに言うなら連れて行ってやる。」と重い腰を上げてくれたのです。

当時の私は,私の娘くらいの年齢(4歳)。父は私を抱きかかえ,カブ1)ホンダの生産するバイク(原付),またスーパーカブの通称のこと。の荷台に取り付けてあった収集コンテナ(ミカン箱)に私を乗せ走り出しました。(当時はよくある光景でした。㊟交通ルール違反なので,絶対に真似はしないでください。)。「一回行ってみれば「面白くない」「もう行かない」と言うようになるだろう」,このように父は考えていたようです。しかし,その父の思惑が,もろくも崩れ去ることになるとは,さすがに父も予想していなかったことでしょう。

ミニチュアのカブ(提供,photoAC)
ミニチュアのカブ(提供,photoAC)

父は友人宅に着くと私をカブのコンテナから降ろし,「ええ子にしとけよ。」と言いながら軽く頭をなで,私の手を引いて友人宅へ入って行きました。「こどもが一緒に行くゆ~け~。すまんの~。(子どもが一緒に行くと言うから(連れてきた)…。申し訳ない。)」。その場に集まっていた友人たちに一言お詫びをし,ペコペコと頭を下げながら父は座りました。私はそのまま手を引かれ,胡坐をかいた父の上にポンと座ります。

いつもの流れでお酒を呑みながら話が弾む大人たち。私はというと,誰かが遊んでくれるわけでもなく,何をするわけでもない。ただ胡坐をかいて座っている父の上に座り,大人たちがお酒を飲みながら仕事の話題やたわいない会話をしているのを見聞きする。そんな私に,「楽しいか?」と小さな声で聞いてきた父。私は元気な声で「楽しい!!」と答えたのです。その時のぽか~んとした父の表情を,今でもはっきりと思い浮かべることができるのです(笑)。

当初の予想は大外れとなってしまい,「これでは,毎回連れて行かないといけなくなる」と頭を抱えていた父でしたが,父は友人に恵まれていました。私の「楽しい!!」という言葉を耳にし,「楽しいか!! えかったの~!!(よかったね~!!)」と,おじさん軍団がにこにこ笑顔で答えてくれたのです。そして帰り際,「ええ子にしとったの(いい子にしていたね),また父ちゃんと一緒に来いよ!!」と,全てのおじさん達が軽く頭をポンポンとしてくれたのです。

こうして私は,父と一緒に出かけることが多くなり,様々なところへ顔を出すようになりました。挙句の果てには,物心がついた頃,「一緒に行きたい!!」と私が言う前に,「一緒に行くか!!」と父が誘ってくれるようになったのです。

 2 「大人の世界」から学んだこと

父が連れて行ってくれるそれぞれの場所で出逢う人たちや異なった雰囲気。そこで繰り広げられる「大人の世界」「大人の付き合い」を幼心に自然と観察していたのです。こどもだからこそ感じることのできる,居合わせた方々のちょっとした感覚の相違や人間模様。様々なシチュエーションに対して,父を含めた大人たちがどのような言動を取っているのか。同じような事象でも多種多様の反応や対応があり,良い意味においても悪い意味においても,「大人の世界」「大人の付き合い」を知ることができたのだと思います。振り返るに,この頃の体験や経験が現在の私に繋がっていることに疑いの余地はないのです。

父と一緒に釣りに行けば,初めて出会う方ともすぐに打ち解け,「釣り」という共通の趣味の醍醐味を共感しながらその場を楽しむ。私は,釣れた魚の名前を聞いて覚えることから始め,そのうち釣れた魚を針から外す係となったり,時には魚がかかった釣り竿を持たせてもらい,「引き2)魚が釣り糸を引く力のこと。」を感じながらリールを巻かせてもらったり。こうして最終的には釣りそのものを覚えていったのです。爾来,釣りに出掛ける時には,父と同じように初対面の方に声をかけ,娯楽としての釣りを満喫しながら,その場を楽しんだものでした。

毎回というわけにはいきませんでしたが,飲みの席にもたくさん連れて行ってもらいました。何度も一緒に行くようになると,おじさん達からも可愛がってもらえるようになり,「おっちゃんとこ来い☆(おっちゃんのところにおいで☆)」と手招きをされ,父と同じように胡坐をかいた膝の上に座るということも多々ありました。しかし,それが誰でも良かったわけではありません。私の中で,座れる人とそうでない人がいたのです。こうした相違は,相手に対する安心感や信頼感にありました。

こどもながらに見ていた大人の人間関係,特に父と相手とのかかわり方を見て,相手への警戒心を解くか否かを判断していたように思います。「お父さんが大丈夫なら大丈夫。」相手を見極める判断材料で最も大きなものはこの感覚でした。というよりは,未だ社会を知らない幼すぎる私には,「父(保護者)」を介した判断しかできなかったのです。

幼児が家族や園の友達以外に、地域のいろいろな友達や大人と関わることは、子どもの人間関係の範囲を広げ、社会性を育てることにつながります。たとえば、自分と考えの違う相手と出会ったり、違いを受け入れたり、時にはトラブルを経験しながら子ども同士で解決することもあるでしょう。また、年齢や立場の異なる人々と接することも子どもたちが多様な価値観や人との関わり方を学ぶ機会になります。こうした経験により子どもたちにはグローバル社会で将来必要になる「多様な文化を受け入れて、周囲の人と協力しながら物事を解決する力」の基礎が育まれると考えられます。

■周囲の人との関わりを増やして「将来必要となる力」を育てる,子どもの社会性を育てるカギは「いろいろな人との関わり」,ベネッセ 教育情報サイト,2016/04/14

私の場合,「飲みの席」ではあったものの,田舎だからこその人間関係によってたくさんのことを学べたのだと実感しています。楽しく飲んでいるのかと思いきや口喧嘩になってみたり,そうかと思えばいつの間にやら仲直りして肩を組んでいたり。その頃は,「近所のつながり」や「地域の温かい眼差し」というものがありました。親(保護者)が近くにいなくても,近所や地域の大人が善悪を教えてくれたり見守っていてくれる環境がありました。

 3 時代の変化とともに変わる地域のかかわり

現代は,地域による子育てといった環境が変化し,そうした意識がとても希薄化しています。その要因の一つには少子高齢化及び単独世帯の増加などが考えられます。

高度経済成長期以降我が国の世帯構成は、従来多かった3世代世帯(注)が減少し、核家族化が進行した。しかし、近年は、高齢単独世帯や未婚単独世帯などの増加により、単独世帯が増加傾向にあり、核家族はむしろ減少傾向にある。

3 世帯構成の変化,第1節 地域社会の変遷,第1章地域社会の変遷と社会保障を取り巻く状況の変化,地域とともに支えるこれからの社会保障 平成17年版 厚生労働白書

(地域内のつながりには希薄化傾向が見られる)
数十年前までは、地域では村落や都市における家族や共同体の中で、相互に助け合うことで、地域で相互に助け合う生活が営まれており、地域の相互扶助機能が高かった。しかし、高度経済成長期を経て、いわゆる都市化が進んだ結果、都市部を中心に、地域の役割が大きく変化してきた。そのような地域社会の変化の中で、地域とそこに居住している者との関わりは、希薄化しているといわれている。

(個人の地域に対する関心は弱まっているわけではない)
居住する地域をよくする活動ができる時間・機会が重要であると認識する傾向は大きくは変化しておらず、「きわめて重要である」又は「かなり重要である」と回答する者の割合が半数前後で推移している。このことから、地域のつながりは活発とはいえないまでも、その地域に居住する者の地域への関心自体が、以前に比べ必ずしも低くなっているというわけではないと考えられる。また、具体的な活動内容については、近年の内閣府の世論調査結果によると、何か社会のために役立ちたいと思っているのはどのようなことか」という問に対する回答として、「町内会などの地域活動」や「社会福祉に関する活動」等が上位を占めており、そのような点からも、地域に対する関心そのものは、弱まっているわけではないと考えられる。

1 地域における意識の変化,第3節 地域の社会保障サービスに対するニーズの多様化,第1章地域社会の変遷と社会保障を取り巻く状況の変化,地域とともに支えるこれからの社会保障 平成17年版 厚生労働白書

厚生労働省のデータを見る限り,すでに平成17年の時点で「核家族世帯」ではなく「単独世帯」の増加が,「地域のつながり」の希薄化に影響していると解釈できます。昭和の時代のような「お隣さん」といったつながりも,ほぼ無いに等しいのが現状ですが,そうであっても「地域のつながり」に関心を持たれている方は多い。何か一つ,ちょっとした取っ掛かりがあれば,そこから少しずつ人と人とのつながりが広がっていくような気がします。また地域行事などに積極的に参加する行動力も大切に感じます。

 4 2回目の「とんど祭り」

今年も昨年同様に,子ども会と自治会のみなさん,そして有志の方が協力し合って準備が進められ,私も子ども会の一員として前日準備から参加しました。

参加された子ども会のみなさんとワイワイ楽しく会話をしながらの作業。おでんの下ごしらえとして大根や蒲鉾を切ったり,ゆで卵の殻を剥いたり,時には水を浴びるというお笑いハプニングもありながら前日準備を終えました。当日は,子ども会のみなさんに加え,櫓立てに集まった自治会や有志の方々とも言葉を交わし和気あいあいと準備が進められました。

「来年のとんどは,みなさんと一緒にお酒を飲む」という昨年の約束を果たすため,一旦帰宅し車を置いて出直し。子ども会の役割が済んでから,お酒を片手に地域の輪に入らせていただきました。1年前は,「住本」という存在(どのような人物なのか)が浸透しておらず,みなさんと対話をする時間がとても少なかったのですが,今回は始めからみなさんの輪に自然と溶け込むことができ,ちょっとした育児相談なども受けました。

こうした変化の背景には,これまでの1年間,親子揃って積極的に地域行事や寄り合いに参加し,準備や片づけも率先して行い,世代や性別を超えた人と人との関わり合いから信頼関係を築くことができた結果だと実感します。私がいなくても,息子や娘に声をかけてくださる方も多く,「住本さんの家の子だ」としっかり認知されているようです。

子どもが成長していく場は、学ぶ学校、暮らす家庭、それに、ともに住む地域のいろいろな人とのかかわりが相互に関連し合ってつくられています。学校や家庭と違って、地域とは「いろいろな異なるものが一緒にいる場」といえます。友達の家に遊びに行った時に感じた「よその家」の姿に一種の驚きや発見があったことを、大人になってからも覚えていることがあります。「決まり」や「考え方」にわが家とは違ったものを見つける新鮮さです。「家の外」に教えられるものの多いことを、みんなで考えたいものです。

(2)地域社会が子どもを育てる,多様な人とのかかわりで育つ社会性,輝け あいちっ子―未来を担う子どものために―,愛知県教育委員会…a

家庭での子育ては、親子の関係を基本としたものですが、地域社会では、老若の年齢差や立場の強い人、弱い人、様々な人間関係があります。同年齢の仲間の中にもまた、様々な人間がいることに気付きます。家庭では得られにくい部分の人間関係を地域の広がりの中で学ぶことは、人としての協調性、社会性、命の尊さ、弱者への思いやりなどを身につけることにつながります。

前掲a

いくつもの家庭が集まって地域社会があり、その中で助け合い、様々な恩恵を受けます。一つの家庭だけでは人間性豊かな暮らしとは遠いものになってしまいます。地域の中で、豊かな人間関係を作っていくことは「持ちつ持たれつ」のお互いのためです。そこに住む人々が、「自分たちの地域社会を作っていく」という気持ちが大切です。

前掲a

「地域のつながり」について強く考えさせられたのは,平成30年7月豪雨3)平成30年7月豪雨とは,2018年6月28日から7月8日にかけて,西日本を中心に北海道や中部地方を含む全国的に広い範囲で記録された,台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨。同年7月9日に気象庁が命名した。でした。地域のつながりどころか,どこの誰かもお互い分からない…。そんな状態の中,避難所となっていた小学校に来て励ましてくださった自治会の方の存在は,とても心強く支えとなったことを今でもしっかりと覚えています。被災後,居住地区は別々となってしまったけれど,私たち親子を温かく受け入れてくださったみなさんには感謝してもしきれません。

そして今,私が幼いころに父がしてくれていたことを,今度は親となった私が息子と娘にしています。こどもの生育環境の中で,「家庭」にはない〈地域のあたたかさ〉を心から感じてもらいたい。「家の中」の関係性だけではなく,「家の外」の関係性がいかに大切かを実感してもらいたい。そのためにも,まずは私と地域の方々とで確固たる信頼関係を築き上げていく必要があるのです。

「お母さん(保護者)が大丈夫なら大丈夫。」

こどもたちが安心して地域社会で暮らしていけるよう,たくさんの〈ご縁〉に感謝し,いつかもといた地区に戻れるようにと願いながら,これからも人の心に触れて生きていきたいと感じた「とんど祭り」でした。前日から当日,お世話になったみなさん。ありがとうございました。

令和2年 とんど祭り
令和2年 地域行事の「とんど祭り」
 おまけ

今日1月30日は,私に「人と人とのつながり」の大切さを教えてくれた父の命日。
あっという間に4年が過ぎました。

父さん。
大切なことを,たくさんたくさん教えてくれてありがとう。
今日はいつも以上に,こどもたちに父さんの話をしました。
私に教えてくれたこと,こどもたちにたくさん伝えていきます。
これからも,どうか私たちを見守っていてください。

©2020 Sayoko Sumimoto

References   [ + ]

1. ホンダの生産するバイク(原付),またスーパーカブの通称のこと。
2. 魚が釣り糸を引く力のこと。
3. 平成30年7月豪雨とは,2018年6月28日から7月8日にかけて,西日本を中心に北海道や中部地方を含む全国的に広い範囲で記録された,台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨。同年7月9日に気象庁が命名した。
この記事を書いた人
住本 小夜子

・育児・教育支援 こころのカウンセラー
・生きる自分への自信を持たせる
 「鍛地頭─tanjito─ 」の副塾長

『愛心×笑顔』
育児の困難さを機に心理学を学び,ペアレントトレーニングをベースとしたオリジナルのコミュニケーション講座を開講。

息子(軽度自閉スペクトラム症+注意欠如・多動症(不注意優勢型))と,娘(定型発達)の子育てに奮闘するシングルマザー。
メンタルケア心理士®(心理カウンセラー),発達障害コミュニケーション初級指導者,文部科学省後援こころ検定®2級合格,訪問介護員2級養成研修課程修了などの資格を有している。

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